Welcome to the Hokkaido-Inu Museum
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北海道犬の特性
北海道犬を「アイヌ犬」(Ainu Dog)と呼ぼう!
なぜ? |
北海道で、エゾヒグマやエゾシカを狩るために、その昔、アイヌ民族(北海道の先住者)が用いた中型の獣猟犬です。
近世におけるアイヌ民族の分布
(提供:アイヌ民族博物館)
当初、アイヌ犬と呼ばれていましたが、1937年、文部省によって天然記念物に指定され、併せて正式名称を「北海道犬(ほっかいどういぬ)」と定めました。当時、実際の管理者としては北海道庁が指定され、戦後は北海道教育委員会に管理が委ねられました(他県における日本犬種の場合も同様です)。
天然記念物には国が「指定」「管理」するものものと地方自治体が「指定」「管理」するものとがあります。現在、天然記念物としての各日本犬はそれぞれの自治体が管理しています。
今では、北海道犬が獣猟(狩猟)に使われることは稀で、展覧会(北海道犬のドッグショー)に向けての競技犬に加えて、家庭犬(室内犬)として飼育される数が増えています。
保存団体
次の3団体が、北海道犬の保存のために登録業務、展覧会(北海道犬のドッグショー)の開催などを行っています(設立順に掲載)。
他の犬種団体のドッグショーの場合、外部形態を中心とした個体審査と比較審査に依拠するのが通例です。しかし、北海道犬の展覧会における比較審査では、出場犬が円陣を組んで「並足」と「速足」を繰り返す中で、獣猟性能の基礎となる歩様や筋腱の発達状態等を確認し、良い犬を次々と繰り上げて順位を決定する方式をとります。実際の様子は、「展覧会アルバム」をご覧ください。
「保存会」(※)では檻のクマと対峙させる伝統の『獣猟競技会』も同時開催されます。
日本ケネルクラブ(天然記念物北海道犬登録協会)
TEL
059-256-3594(三重県)
社団法人天然記念物北海道犬保存会
TEL
011-261-9910
FAX
011-261-9910
天然記念物北海道犬協会
TEL
011-741-1576
FAX
011-741-3778
いずれの団体も、獣猟性能の形質維持を前提とした犬種の保存・資質向上を目的としており、原始の姿を保存するために「標準体型」を設定し、人為的に改良することを厳しく禁止しています。
会員としてのブリーダーが、誠意をもって子犬を1頭数万円で会員や希望者に譲渡しています。決して、商業主義に走ることはありません。
キビキビとした動作・激しい気性
ツキノワグマよりどう猛なエゾヒグマにも、勇敢に立ち向かうパワフルなイヌです。
イヌがクマの後ろへ回り込みながら、激しくほえたて、クマがひるんだスキにアイヌがトリカブトを塗った毒矢を放ち、クマを討ち取ります。イヌはクマの猛烈な平手打ちを避けるため、瞬時に飛び跳ねます。
アイヌ民族は、そうしたキビキビとした動作の個体を選抜してきました。かなり気性の激しい個体が多いのは事実です。
「北海道犬はヒトを咬む」・・・よく、こう言われます。確かに、うれしいときや何かを要求するときに軽く咬む傾向が見られます。問題は激しく咬む個体の場合ですが、これは育て方に問題があることもありますが(甘やかしたため、犬がヒトより順位が高くなった)、遺伝的に咬み癖を持つ(矯正不能)場合もあります。最近では家庭犬として家族に接するという事情もからんで、極端に気性の激しい個体を繁殖しないようになってきました。
三角形の吊り上った眼・やさしい顔
勇敢な戦士の側面を持ちながらも、
その顔はやさしい印象を与え、むしろ、かわいいと言われることも少なくありません。やや三角形の吊り上った眼を持ちますが、ストップ(ひたい中央のくぼみ)が明瞭ながらも浅いことが、
その温和な顔作りに役立っています。
耳はやや小さな三角形で、力強く立っています。
優れた狩猟性能を持ち、縦横に野山を駆け巡るために足が発達し、前から見た前足は特に太く感じます。
尾は太く強く、ほとんどの個体では右か左に巻いていますが、一部の個体では差し尾(まっすぐ立つ)になっています。
ほとんどの個体で、舌に黒い斑(舌斑という)があります。
毛は二層に分かれ、上毛は硬く下毛は柔らかです。
耐寒性があり、雪の中で丸くなって寝ることができます。
久々の雪の中では、ひっくり返って雪に背中をこすりつけるなど、無性にうれしいといった行動を示します。
毛色は赤・白・黒・狼灰・胡麻・虎がありますが、大抵は赤か白です。狼灰・虎はほとんどおらず、黒系も少ないです。
寒冷地に適応した豊かな被毛を持ちますが、季節の変わり目(年に2回)に、下毛が次々に浮き上がるように猛烈に抜けるので、数日を掛けて金ブラシ等で取ってやるといいでしょう。
散歩は禁止???
きちんとしつけるならば、一定時間、室内に入れて飼育することもできます。室内のもろもろのルール(いたずらしないこと)を、ヒトが一度、教えるならば一生忘れません。たとえ、室内の小紙片であっても、いたずらすることはありません。もちろん、カーテンを破ったり、物を食いちぎったりすることもありません。
一般に、イヌが成犬になっても室内を荒らすような行動をとる場合、「運動量」や「しつけ」や「愛情のかけ方」に問題があります。もともと野生味が強くて性格のキツイ犬種ですので、「しつけ」には明確で語気を強めた短い言葉を発してください(「ダメ!」「ヨ~シ!」「来い!」と短い言葉を使う)。
叱る場合は、その場で短い言葉を使ってください。時間が経ってから怒っても、犬には全く通じません(犬に誤解を与える結果となります)。
北海道犬を24時間、室内だけで飼育することは避けた方がいいでしょう。屋外での運動が大事です。散歩程度では、北海道犬のパワフルな本能を満たすことはできません。広い庭やサークルを自由に走り回る環境にあれば、散歩程度でも一応、飼育できます。それでも、屋外で、ときどき走らせることが望まれます。獣猟犬にふさわしい体を作り上げるためには、規則正しい相当量の運動が必要です。
運動できないことがストレスになると、それを発散する(あるいはヒトに運動を要求する)ために、ヒトを咬んだりする可能性もないとはいえません。
かなりの甘えん坊・粗食で生き抜いてきた
厳しい北海道の冬を、アイヌ民族に寄り添うようにして生き延びてきた北海道犬は甘えん坊です。また、食料が限られていた北海道の冬の生活に適応して、粗食で生き抜いてきたと予想できます。
現代の飼育では、もちろん、必要にして充分な食事を与えることが愛犬家のつとめであります。好き嫌いなく食事をとる犬種ですが、からだを作っていく子犬時代(1年間)に栄養をつけてやることが特に大切です(日に数回の食事を充分に与える)。
成犬になれば、その運動量に応じて、栄養バランスの取れたドライ・ドックフード200~300g程度の食事(1日に1回)で充分です。野菜を加えることができればベストです。おやつとしては、日本で育ってきた(進化してきた)犬種ですので、ニボシ等の魚を主体にするといいでしょう。
なお、たいへん水を飲みたがる犬種ですので、いつでも身近にたっぷりと水を用意してください(バケツに一杯用意するつもりで)。
咬むことは深い愛情表現
甘えん坊ですから、短時間でも数多くの相手をしてあげると、精神的に安定したイヌになります。やたらと飼い主を咬むような場合、その接し方、運動のさせ方、運動量に問題があるかも知れません。
うれしい場合、ヒトの尻などを瞬時に咬む個体もあり、恐れたり誤解してはいけません。こうした個体には、「痛い!」と何度か告げてやると、激しく咬むのをやめますが、咬むという習性を完全に取り除くことは困難です。
うれしいときや何かを要求するとき、飼い主に呼応するかのように「ウォーン」と独特の声で吠える個体が多いです。この吠え方は、オオカミの遠吠えを思い起こさせ、この辺にも野生味が残されている証拠があるのではないでしょうか。決して、「反抗している」などと誤解してはいけません。
大胆で独立心が旺盛で、自己主張が強く(頑固で気難しいところもある)、激しい性格を持つ半面、甘えん坊で神経質な性質を持つ個体も多い犬種ですので、特に愛情をかけてやることが大切です。うんと大げさに誉めて誉めまくるぐらいに声を掛けてください。
極端に良くない事例ですが、「飼い主が酒に酔って毎日からかい続けているうちに、その個体はすっかり人間不信におちいり、絶えず吠えついてヒトを寄せ付けないイヌになった」例があります。
犬は一般に『仲間』と群れ、リーダーと順位を求めて、群れ全体の統率(バランス)を図る習性が強い動物ですが、北海道犬も例外ではありません。ここで言う『仲間』とは、犬とヒトを含めたものです。複数犬飼育では、成犬になった時点で激しい闘いが起こりますが、順位が決定された時点(負けた方が腹を見せるなど)で相互に静かに過ごすようになります。ヒトと犬の順位に関しての注意ですが、マウンティング(ヒトに対して交尾のような馬乗り行為をすること)をされた場合、何度もそれを許すと、そのヒトは犬の下の順位にされ、犬はそのヒトの命令を聞かなくなる可能性が出てきます。
「勝手犬」
物に動じず怖いもの知らずで、屋外に出ると外界の各種の刺激に敏感で、とても落着かないように見えます。室内で教えた「お手」なども、屋外ではなかなかやらず、絶えず外界の様子に気を配ります。これも、獣猟犬としての特質です。
もし、ヒトがうっかりリードから手を離してしまうと、ほとんどの個体は勝手に駆けて遊びに行ってしまいます(呼んで手元にすぐ戻るのは、成犬前の幼犬時代だけです)。当館では、北海道犬のことを「勝手犬」と呼んでおります。ですから、自動車の多いところでは、イヌが離れないように注意が必要です(怖いもの知らずなので、平気で路上に出ることもあります)。リードから離れた犬は、必ずや他家の犬や猫を追い回し(狩りの習性を発揮)、被害を及ぼすと考えてください(少なくとも、治療費を払い、謝罪の菓子折り持参を覚悟してください)。
走るものを追いかける性質が強く、「走ってきた大型トラックに吠えついて飛びかかり、車輪に巻き込まれて死亡した」事例もあります。獣猟犬ですので、自転車や走る子供に食いつくという習性もあり、要注意です(普段から人に馴染んだ個体でも気を付けてください)。
あれほど可愛がっていたのに飼い主が咬まれた場合(牙が刺さった、牙で切られた)、必要以上に犬を追い込んでいなかったかどうか反省してください。特に、「このまま家にいたい、外で過ごしたくない」という強い意思をもって室内ケージに逃げ込んだとき、不用意に手を入れることは危険な場合があります(犬にとって、ケージはオオカミ時代のほら穴に相当し、自分の住み家を死守する)。一見おとなしそうに見える個体の場合、反面、神経質なことも多く、要注意です。神経質な個体には、「オイデ」「イイ子だね」と普段から優しく声を掛け、よく撫で上げて『良き手』であることを教えてください。
ドッグランを利用する場合は、他犬とは一緒にしないでください。黙って近づき、いきなり咬み付くのが普通です。他犬や人が全くいない環境でない限り、ノーリードで歩いたり、放したりすることは厳禁です。
穏やかな性質を持った犬とは違い、興奮性の遺伝子を持つ犬種です。その形質こそが、激しい気性を形成し、獣猟向きと言われる由縁です。
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アイヌ民族
(提供:アイヌ民族博物館)
1997年5月8日、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(略称:アイヌ文化法)が成立しました。
アイヌ民族を同化させようとしてきた「北海道旧土人保護法」が廃止され、アイヌ民族の意向を反映させた「アイヌ文化法」ができたわけで、「先住性は歴史的事実」とする付帯決議も可決されました。新法は「北海道ウタリ協会」の原案からは後退していますが、アイヌの人たちを民族として認めた点で大きな意義を持っています。
新法は、伝統文化やアイヌ語の保存などを通して民族の誇りを取り戻すのが狙いです。
この新法成立を機に、北海道犬の育ての親であるアイヌ民族の発展を、切に願いたいものです。
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